20世紀的脱Hi-Fi音響論(第六夜)


【70年代歌謡曲】(その三)

出口の見えない末期的症状

■私的なオーディオ感
 こうしていろいろ糸口を掴もうと必死なわけですが、実際は日進月歩です。使ってる機器のリストも迷走気味。
CDトランスポート CEC TL-51X ベルトドライブCDの音は輪郭のグラディエーションが豊かで立ち上がりはスマート。
水彩画の澄んだ感じで世にいうアナログ風とは一線を画す表現です。
DAコンバーター CEC DX51mkII A級無帰還のバッファを備えたもの。無駄がなくシンプルで優等生的な音を出す。
ミキサー RANE MP2016 70年代にUREIが製造した伝説のディスコ・ミキサーの2000年版レプリカ。
オペアンプを使いながら真空管のような暖色系の音にまとめるあたり通好み。
パラメトリックEQ Oram HD-Def35 70年代初期にトライデント製ミキサーを設計したOram氏の近作。
こちらは素直な音のイコライザーで何の引っ掛かりもない。ラウドネス補正用。
パワーアンプ Boulder 250AE アメリカ製のスタジオ用アンプでタイトで厚い中域を持つ。
透明感や高域の伸びはひかえめ。RANEのサウンドと被る。
スピーカー 富士通テン TD512 12cmフルレンジと卵型エンクロージャのスタジオ用モニター。
ラジオとスタジオの中間のテイストを狙うのに打って付け。
スーパーツイーター TakeT BATONE 富士通テンの補佐役として超高域の輪郭を付ける。(20kHz〜60kHz再生)
マスターテープの劣化したソースでは覿面に効果が出てくる。


 ほのぼのとして稟とした。。。に憧れて。


 ラウドネス調整)
 中高域を抑えてスーパーツイーターで辛める
 ノイマン系のマイクに合う設定です


 こちらはAESの論文から引張ってきたトーン
 ラウドネス効果とマイクの近接効果を合わせたもの
 この機器の流れをフォローすると、音のグラディエーションの精彩感をCDトランスポートで出して、それにディスコ用ミキサーで人肌の温もりを付け加え、パラメトリックEQでラウドネス補正をした後、フルレンジスピーカーで有線&FMラジオ風の音に仕立て、丸まった眠い音はスーパーツイーターで水をぶっかけて目を覚まさせる。結果は、白米のご飯にみそしるとお新香という、なんてことの無い音になるのですが、実はこれがべらぼうに美味い。ベルトドライブCDの音はコシヒカリのようで、ディスコ用ミキサーはホカホカの赤出汁のみそしる、イコライザーやスーパーツイーターが京漬けのお新香なら、フルレンジは。。。てな具合で、どんな録音をおかずに持ってこようと和膳の準備が出来てるわけで。こういう音を何気なく出すのにお金が掛かるのか? これが悩みといえば悩みです。

 歌謡曲のミックスバランスはFM放送以前と以後では多少異なっていて、FM放送以前はPA機器を介したステージ音響を基本にした中域のグラマラスな録音が多いのに対し、FM放送以降は家庭用ステレオレシーバーを基本にした透明感のあるスマートなものに変わってきます。フルレンジでの試聴はむしろ後者の時代背景に即しているわけです。一方で当時は3wayスピーカー全盛の頃で、高域にスパイスが効いたほうが録音に若々しさ出て良いときがあります。この場合、イコライザーでの補正ではノイズが乗ってきますが、スーパーツイーターだと入力信号があったときだけしか動作しないのでノイズは乗りません。これで凛としたアコースティックな味わいを出してくれます。ただフルレンジのTD512も古色蒼然としたものではなく、モニタースピーカーらしくインパルス応答の揃ったスムーズなレスポンスを持っています。いわゆる解像度を高めてソースの粗まで浮き出すというものでもありません。信号のダイナミクスがスムーズに発散されるタイプです。このレスポンスの良さにベルトドライブCDのグラディエーションの豊かさが加わります。ベルトドライブのCDプレイヤーはサーボ制御を緩めることで、音の輪郭補正を外したようなスッキリした持ち味があります。個々のコントラストは高くないのものの、全体に階調がスムーズな表現です。喩えていえば、一度送信信号に変換されブラウン管に映った荒々しいゴーストノイズや輪郭補正された被写体ではなく、光学レンズを覗くようにデフォルメはあっても実物との比較が容易な見え方です。この自然な実在感が生楽器によるインストの手触りを巧く出してくれます。ボーカルだけが暖かい最近のポップスとも違うわけです。

 CD、スピーカーの他に、サウンドを決める三種の神器のうち、DAコンバーターおよびバッファーアンプについては選定中です。(NEVE系にしようかUREI系にしようかで悩んでいる)



■ガレージメーカーの知恵袋
 1990年代以降、日本でガレージメーカーにスピンアウトした設計者には団塊世代の人が多いようです。実際には仕上げがイマイチとかあるのですが、かつてオーディオ・バブルからデジタル移行期を経験し、その荒波にもまれながらスピンアウトして現状のマーケティングへの批判の根底にあるのが、かつて70年代に最盛期を迎えた古いアナログ技術です。そういう人々が造る音に共通しているのは、刺激のないなめらかな質感をもったベルベットのような音です。その記憶を頼りに手作りで調整しているのかもしれません。

 CECは当初LPプレイヤーの製産台数で世界有数を誇るメーカーでしたが、CD時代に突入しその技術を駆使したのがベルトドライブのCDプレイヤーです。富士通テンのタイムドメイン理論の草案者は元オンキョウのエンジニアでした。TakeTの開発者はソニーの音響研究所にいましたが20年以上技術の埋もれていたものです。SAGE音響は90年代に真空管アンプにブームがやってくる前に活躍してたメーカーです(サンスイ系列でしょうか?)。いずれにしてもこれまでのマーケティングの理屈から外れたところで造られた物が多く、繰り出すサウンドはいずれも繊細でクリアな美質を兼ね備えた製品ばかりです。RANE(Phase Linear社から独立)は70年代のディスコ・シーンのアナログ感覚を色濃く持って80年代に創業してますし、Oram氏に至っては70年代初頭にマルチトラック用のコンソールの製作で名を馳せた人です。個人的な憶測では音響的なチューニングというのは素材よりも腕のほうが遙かに大切なので、方法に囚われないで個々の技術者のもってるサウンド・イメージが強く反映しているように思われます。デジタルだからアナログだからという単純な思考はこうした人々とは無縁とも思えるときがあります。


■ケーブル錬金術見習い
 例のごとく、ある程度装置の選定が煮詰まったら接続ケーブルによるチューニングです。
CDT
Audio Technica
古い青ケーブル
SPD/IF
DAC
StereoVox
HDSE
アンバランス
Mixer
Belden
8412
バランス
EQ
古河電工
Beamex
バランス
Power
SharkWire
銀コート
PCOCC
SP

 基本的に色付けのないケーブルが好きで、アンプ間のバランスケーブルではOFCシールド線を使ってます。CDトランスポートからDAコンバーターの接続はSPD/IFですが、Audio Technica製の初期PCOCC線で繋いでいます。情報が若干整理されますが、音にささくれだったところがなく中低域が太くなる印象です。(他にサエクのAES/EBUケーブルがあり、比較的良質な録音ではこれを使用します。) DAコンバーターからミキサーまでは、ミキサーがRCA入力しか備えていないために、少し高価なのを奢ってStereoVoxのHDSEを使用してます。とても細い線ですが中空のパイプ銅線を使って表皮効果を無くした構造をとっているらしいです。これも中域の抜けの良さと高域のクセの無さが特長で、全体に筋肉質で弾力性のある表現をします。特にベースの弾み具合はとても好ましいです。スピーカーケーブルは銀コートですが高域にクセのないもので、直線的というよりは繊細な感じの音です。電源ケーブルのほうは、まだ対策をとっておらず今後の課題になります。


■超音波の秘密
 この手の話題は円谷プロに訊いてみたいところだが、20kHz以上の帯域のことです。アナログ再生で云われるのがこの超高域でのフィルターレスの自然な響きです。もちろんアナログ録音は高域成分そのものもエネルギー感が薄く繊細なわけですが、超高域の音はアンビエンスから風切り音などが主流で、録音レベルとしても通常の音域に比べて20dB程度低いものです。しかしこの帯域の音は臨場感を左右する情報が詰まっていて、この成分の扱いで音の気配や柔らかな倍音などの聞こえ方が変わってきます。特に70年代の録音にはプレート・リバーブがよく使われますが、これが鉄板にピックアップ・マイクを付けたシンバルのようなモノなんです。

EMT #140ST プレート・リバーブ

シンバルの周波数特性

 この鉄板エコーの凄いところは、虫の声のようなアイドル系の歌手でも、この超高域成分がグワ〜ンと乗って全体に広がり感を醸し出しています。何でもリッチな音に変えてしまう魔法の箱なのです。他に電気的にコーラス・エコー(EMT社251、Aphex社Aural Exciterなど)を使う場合がありますが、鉄板エコーほど広帯域でリッチな音ではありません。デジタル時代になって何が足らないかといえば、この手の高品位なアンビエンス・マシーンということになるようにも思います。逆にテープ磁気の劣化で失われやすいのもこの成分で、一般に50年代の録音よりもモコモコした音になりやすいのは、テープ磁気箔の薄さ(古いほうが厚い)によって高域特性は伸びたものの初期状態からの変化がよりシビアになっているようです。こうした理由からレコードの初期プレス盤にプレミアが付きやすいことが起こるわけですが、一般庶民にはあまり関係のない話でございます。



 もう一度最初から読み直そうか。。。なんて悠長な。


 つづきは Coming Soon!


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